中和価

中和価は潤滑油の劣化の程度を知るための重要な値で、酸価は潤滑油などが酸化劣化して生成した酸性物質の量を示している。

また、塩基価は油中に混入する酸性物質を中和するために添加されている塩基成分の現在量(残存量)を示す値であり、いずれも潤滑油の劣化状況を把握し、継続使用の可否を決める重要な数値である。

中和価には酸価、強酸価、塩基価および強塩基価があり、試料1gに含まれる酸性および塩基成分の量に相当する水酸化カリウムのmg数で表され、酸価と塩基価が多用される。

酸価は試料中の酸性成分の全量、すなわち天然ナフテン酸、添加材中の酸性物質、使用中に生じた有機酸などの合計量で精製度の評価、製造時の管理、使用潤滑油の管理あるいは潤滑油の酸化試験や実用試験後の評価などに広く用いられる。

酸化は、ストレート油においては新油の精製度の尺度として使用され、一般に、高度に精製したものは酸価は極めて低く、0.02mgKOH/g以下である。

しかし添加材、特に酸化防止剤、清浄分散剤、その他、さび止め剤、極圧剤の入っているものは新油でも高い酸価を示す。

また、使用油においては、油の酸化劣化の尺度としてよく酸価が用いられている。これは経験的に酸価が酸化劣化の度合いと比較的よく比例することがわかっているためである。

潤滑油が劣化するにしたがって酸化は増すのが普通であるが酸性の添加材の消耗のため一時酸価が減少したり劣化してもほとんど酸価が変わらないものもある。

強酸価は試料中の強酸性成分の量を示し、普通はディーゼルエンジン油中に燃料排気より混入してくる硫酸の量の管理などに利用される。

潤滑油精製工程における硫酸処理後の残存硫酸量も強酸価として表される。

塩基性物質の量を示すのが塩基価と強塩基価であるが、天然の石油留分中には塩基性物質はほとんど存在しないので、塩基価は清浄分散剤(CaやMgの金属石けん類が多い)の量の尺度としてエンジン油の評価や使用エンジン油の管理にもっぱら用いられる。

特にヘビーデューティー油では塩基価が大切である。これは塩基価と酸価中和性がよく比例するからである。

すなわち、塩基価がどの程度になれば酸腐食の防止性が低下するかということが経験的に大体わかっているからである。

このように酸価、塩基価は、油中の酸性成分または塩基性成分の絶対値を示すものではないが、劣化や中和性能と比較的よく比例することがわかっているため、この変化で劣化や中和性能を判定している。

しかしすでに述べたように、添加材によって酸価があらわれることがあり、同じ酸価でも酸の成分相違まではっきり示すことができないため、特に添加材入りの油では注意する必要がある。

中和価測定には指示薬滴定法、電位差滴定法の二法が規定され、中和試薬として、水酸化カリウムおよび塩酸を使用する。この他に塩基価測定として、過塩素酸法が規定される。

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