自動車用ギヤーの適油

自動車用ギヤーの適油に際しては、ファィナルギヤーの型式、走行条件、LSDの有無、更油期間などを総合的に考えて判断する必要があるが、基本的には以下のとおりである。

■ ミッション

 ● 手動式ミッション(Manual Transmission):GL4以上(ギヤー油のAPIサービス分類参照)

 ● 自動式ミッション(Automatic Transmission):ATF

 ミッションには手動式(Manual Transmission)と自動式(Automatic Transmission)がある。

 手動式は平歯車を使用している場合が多く、荷重もそれほど高くないが便宣上、一般減速機と同一銘柄のギヤー油を用いる。

 自動式(Automatic Transmission)は

  駆動力を伝達し、さらにそのトルク比を自動的に変化させる働き。

  回転速度差のある駆動軸と被駆動軸との連結を滑らかにするクラッチの働き。

 を有しており、流体継手ギヤー油の他、ギヤーの組みかえをかえるための油圧機構やクラッチが組み込まれている。

 このように手動式ミッションとは全く機構が異なっているため自動式の潤滑油としてはATFが用いられる。

 ※注意:一部のメーカーによってミッションにエンジン油やATFを用いる場合があるので十分注意する必要がある。

■ デフ

 ●LSDなし:GL-5(ギヤー油のAPIサービス分類参照)

 ●LSDあり:GL-5(ギヤー油のAPIサービス分類参照)

 自動車の終減速ギヤーとしてはハイポイドギヤーやスパイラルべベルギヤー(マガリバカサ歯車)が広く用いられる。

 自動車用のギヤーは一般工業用のギヤーに比べて荷重、温度が高く、その上衝撃荷重が頻繁に加わるため、極めて過酷な条件にあるといえる。

 ハイポイドギヤーやスパイラルべベルギヤーは歯のかみ合い面積が大きいため、大きい力の伝達ができる。

 いいかえると伝達馬力の割合に比してギヤーの大きさが小さくできるが、逆に歯面のすべり速度は大きくなる。

 特にハイポイドギヤーはリングギヤーとピニオンギヤーの中心がずれている(オフセット)ためすべり速度は一層大きくなるが、最低地上高を確保しつつ重心を下げることができるという特徴があるため、ほとんどの乗用車に採用されている。

 又、自動車にはハンドルをきって曲進する時、円滑に曲がるために一般に差動機構(Differential)がついているが、逆に動輪の一方がぬかるみに入ったりして空転すると動力がすべて空車輪に逃げて運転不能となる欠点がある。

 これを防止するため左右の車の回転差がある一定の範囲をこえると、自動的に差動機構を制限する特殊なクラッチが組み込まれたものをLSD(Limited Slip Differential)という。

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